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おにぎり落ちたそのまま食べた 第5話
言われたとおり進むと、道は途切れ大きな穴となっていた。
「ここを飛び込むのか……」
流石に勇気がいる。でも、飛び込まないといけないのである。きっと、この先も。
「ノゾミ、飛び込むよ。準備はいい?」
ノゾミはユタカの身体に顔を埋めながら首を縦に振った。
「じゃあ、1……2……3!」
思いっきり飛んだ。お姫様抱っこの状態で飛んだ。落下する。流石に怖かった。でも、怖いなんていってられなかった。
気がつくとそのまま、意識を失っていた。
――眩しい。
太陽の光が2人を照らしていた。暖かな光が、寝ている2人を輝かせていた。
2人は同時に身体を起こした。気がつくと、レジャーシートの上に寝ていたようだ。
「……夢? 変な夢だったけど」
ノゾミがボソッと言った。
「僕も変な夢を見てた。穴に落ちたら、ネズミの世界にいて……妙にリアルだったけど、夢だったんだ」
ユタカは眠気眼を擦りながら言った。
「……実は夢じゃなかったりね」
スカートのお尻の部分を抑えながらノゾミは言った。まるで、何かを隠すかのように。
「何で?」
「内緒だよ」
ノゾミは意地悪な微笑みを浮かべて人差し指を自らの唇につけた。
「あのさ、ユタカ」
「ん? 何?」
「『かの』に続く言葉って何?」
追伸
あの後、私達はお互いに同じ夢を見ていたことについて話したんだ。実は夢じゃなかった。それだけはいえるだって、まだ、人間に戻りきっていない部分があるから……恥ずかしいけど、ね。
そして、『かの』の続き。結局教えてはくれなかった。でもユタカから「付き合ってくれ」って言われた時はビックリしちゃった。遠回しに、答え合わせ。もちろん、答えは……内緒。これは2人だけの秘密。
でも、これだけはいえる。私達は幸せに生きていける気がすると。
また、明日会おうね。ユタカ。
あの後、僕はあの夢について話したんだ。ノゾミは夢じゃないって言ったけど、何でそんな事がいえるんだろう?
そして、『かの』の続き。あの時、恥ずかしくて遠回しに「付き合ってくれ」なんて言っちゃったけど、「彼女になってくれ」なんてもっといえない気がした。あの、ビックリした顔。その後の、微笑んだ顔。僕は幸せだ。結果は2人に内緒だ。
後、ノゾミのお父さんのことだけど、実は3年くらい前からいなくなっていてまだ見つかっていないらしい。もしかしたら、あのネズミが本当に……けど、夢なんだよね。
でも、これだけはいえる。僕は彼女を幸せにできる。そう、生きていけると。
また、明日。ノゾミ。
ある日、おじいさんはおにぎりを落っことした。それは転がって、穴に落ちた。そして、ネズミたちはそのまま食べた。
まるで、昔話のような夢だった。