08/10/15
あの青空に祈りを捧げ 第24話
・友達〜輪は大きく広がる〜
知兄貴は黙って叶音をつれて帰っていった。叶音の抵抗も空しくあっさりと部屋から消え失せた。
またまた部屋が静かになる。外は、もう暗くなっていた。
「学校かぁ……叶音ちゃん、楽しくいければいいね」
「そうだね」
俺は決意をした。
「俺が、優衣を学校に連れて行くよ」
「え……?」
「一日だけかもしれないけど、俺が優衣を連れて行く。誰かに反対されても、止められても絶対に……」
俺は、荷物を持った。
「ごめん、そろそろ帰るよ」
「そうですか……」
彼女は微笑んでいた。俺も微笑み返す。
「そうだ、明日は検査で明後日はお母さんが来るので、来るんだったら月曜日にしてもらえるかな?」
「うん、わかった」
俺は、彼女の病室を後にした。そして、階段を下りて1階まで来た。
「おい、颯太」
知兄貴に呼び止められた。少し、ご機嫌は斜めだが、そこまでは怒ってはいなかった。
「何だ? 知兄貴」
「ちょっと紹介しておきたい人がいる」
紹介したいって誰だ? 俺は疑問を持ちながらあの診察室に入った。
*
俺――俊之は颯太と別れた後、俺は自宅に向かわずにとある道を歩いていた。颯太の家に一番近い道。
少し歩くと静香の家、ケーキ屋の前にたどり着いた。やっぱり昔と変わらないケーキ屋。クリームの甘い香りが漂ってくる。いい匂いだ。
俺が通過しようとしたとき、突然呼び止められた。
「俊之? どうしたの?」
未来の店長。静香がエプロン姿でドアを半開きにしてこちらを見ていた。どうやらボールでクリームをあわ立てている最中らしい。
「ちょっと、颯太の家に用事がな」
「そうなんだ。後で私も行っていい?」
「いいよ」
「じゃあ、このケーキが焼きあがったらもって行かせてもらうよ」
静香はボールを少し持ち上げてアピールをするかのように言った。そういえば、静香の作ったケーキは食べた事なかったな。
「わかった。待ってるよ」
そう返事をすると静香はニコッとした後、ドアを閉めた。俺は再び歩き出す。
もう暫くすると、颯太の家に到着。チャイムを鳴らす。
「お、俊之君。いらっしゃい」
颯太の親父さんが出てきた。今日も元気そうだ。俺は、挨拶を交わして家の中に入れてもらった。
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