07/12/27
祭囃子〜聖なる夜に〜 後編
そして、次に着いたのは大きな病院だった。
「今度は、俺が行ってくるよ」
「わかった」
祐樹は屋上から忍び込み、とある病室に入った。中には、ベットに横になる少女と横の丸椅子に座る少年がいた。部屋の明かりは消されていて、ケーキのろうそくの火がゆらゆらと輝いている。
「誰!?」
少女は祐樹に気がついて少し、身を引いていた。
「誰だ!?」
少年は祐樹に襲い掛かってきた。が、しかし途中で手を止めた。
「祐樹? 何で、お前がこんなとこにいるんだ? しかも、その格好はサンタか?」
「まぁ、訳ありでって、颯太のほうこそここで何を……」
「俺も、訳ありだ」
「そうか、邪魔したな。これ、置いてくから彼女とでも開けてくれ。メリークリスマス」
祐樹は箱を二つ置いて、さっさと立ち去っていった。
*a*
「誰? 颯太さんの友達?」
彼女は俺に聞いた。
「中学校のな……にしても、プレゼントを配ってるって」
俺は箱を取って、一つを彼女の渡した。そして、もう一つは俺が手にとって開けてみる。
――入っていたのは色違いのペアマグカップ。やってくれる。
「二人、同じのだね」
「そうだな……まるで――」
俺はろうそくの火をフッと消した。今の俺の顔を彼女に見られたくないからだ。
***
次は大き目の一軒家の一階にたどり着いた。袋のプレゼントの量を考えると多分最後だ。
「次は私ね」
「わかった」
まつりは家の敷地に入り、窓をノックした。
「どちら様?」
出てきたのは、まつりと同い年くらいの少年だった。
「私、見ての通りのサンタクロースです」
「は、はあ……」
相変わらず、冷ややかな対応である。まつりは、部屋の中を一瞬覗いてみた。少年の他に普通の少女と猫耳の少女がいた。
「はいこれ、プレゼントね。メリークリスマス」
まつりは袋の中身を全部ひっくり返して、出てきた箱を全部渡した。といっても三つだけだが。
そして、まつりは立ち去った。
*k*
「で、今の誰だったの?」
澪が口に生クリームをつけながら聞いてきた。
「さ、さぁ? 自分でサンタクロースって言ってたけど……まぁ、これやるよ」
俺は澪に箱を渡した。中身は知らん。
「美鈴にも、はい」
「ありがとう」
もう一つを美鈴に渡した。
三人同時に箱が開かれた。中から出てきたのは、マフラーだった。
「……悪くないかもな」
まぁ、クリスマスパーティの続きが行われるわけだ。
***
祐樹とまつりの乗ったそりは祐樹の家の二階で止まった。
二人はベランダに飛び移って、部屋の中に入った。すると、白髭のおじいさんが赤い服を着て立っていた。
「ありがとう。助かったよ。お礼はここに置いておくから、後ででも開けて欲しい。今日は本当に助かったよ。じゃあ、また。」
おじいさんは眩い光を放った後、そりと共に消えた。二つの箱を残して。
祐樹もまつりもサンタ風の服から、昼着ていた元の服に戻っていた。
「……本当にサンタクロースだったんだ」
祐樹は唖然としていた。いつか信じなくなっていたサンタクロースが実在していたと。
「ねぇ、これ、開けてみようよ」
「そうだね」
*m*
何が入っていたか? それは秘密。二人だけの秘密さ。
最後に一つ――
メリークリスマス。
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