08/10/13

あの青空に祈りを捧げ 第21話

・友達〜輪は大きく広がる〜



俺が帰宅しようとしたら、病院の正門に俊之がいた。

「冷やかしなら、聞かんぞ」

何か言われる前に俺は言った。しかし、俊之は手を軽く振って否定を表していた。そして、2人それって歩き出した。

「優衣さんって、何の病気なんだ?」

「……聞かれても、誰にも言うなよ。言ったら、ぶっ飛ばす」

「わかってる。たとえ、お前のおや……何でもない。続けてくれ」

何だ、この俊之の真面目な顔は。そして、俺のおや……? まぁ、いいや。俺はこいつを信じて語ることにした。

「彼女は肺の病気だ。そのままでは完治はせず、『移植』をするしかないらしい。きっと、発作か何かが起きれば彼女は――。だから、友人といえる人間がいない彼女の残り少ないかもしれない人生を楽しいものにしてあげたいんだ」

「……そうか。なら、大切にしてやれよ。俺も……一友人として、その手伝いをさせて欲しい。誰かに頼まれたとかじゃなくて。頼む」

俊之は両手を合わせて、俺に願ってきた。

「……そうだな。人数は多い方がいいよな」

「ありがとう。恩に着るよ」

さて、何の恩だか……

その後、バスに乗って、終点の駅で別れた。家に着いたときには親父はいなかった。


――次の日。学校は普通に過ごし、俊之は珍しく先に帰って行った。俺一人で橘病院に向かう。

そして、向かう先は彼女の病室だ。ドアの前に立ってノックをする。

「はい」

彼女の声だ。

「は〜い」

さらに、もう1人の声がした。誰なのだろう? 俺はドアを開けて部屋に入った。ベットで起きている彼女ともう1人。中学生くらいの少女がベットに座っていた。目の辺りに包帯が巻かれていた。

俺は「やぁ」と手を上げて彼女に挨拶した。彼女は「こんにちは」と答えた。

「……ねぇ、お姉ちゃん。誰が来たの?」

その少女は彼女の方に顔を向けて聞いていた。にしても『お姉ちゃん』って、彼女とはどんな関係なのだろうか?

「あたしのお友達だよ」

「そうなんだ」

少女は嬉しそうに答えた。その顔を見ると、彼女も微笑んだ。すると、少女は手を差し伸べてきた。まるで、握手を迫っているようだった。俺は同じく手を差し伸べて彼女の事を見た。彼女はうなずいた。やっぱり握手をすればいいのか。

俺は少女の手を握った。少女は答えるかのように握り返してきた。相当力を入れているようでけっこう痛い。

「お兄さん、弱そうだね」

んな! 何だこいつは! 初対面で言うか? 実際弱いけど、そんな率直に言うのか?

少女は嬉しそうに微笑んでいた。

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