08/05/18
あの青空に祈りを捧げ 第19話
・縦読み〜たてよみと書いてこいぶみと読んでみる〜
「友達ってやっぱりいいですね」
彼女の目からは涙が出ていた。よっぽど面白かったらしく、ずっとクスクスと笑っていた。
「まぁ、そうだね。どんなに『変人』でも友達はいいものです」
あ、俊之が起き上がってきた。
「『変人』ってなんだ。俺はそんなに変なのか?」
「変」
「変です」
即座に俺は答えた。彼女も答えた。俊之の体はピクピクと震えていた。流石に怒らせたか。
「ちょっと、優衣さんまで。酷い。酷すぎる……まぁ、御二人さんの邪魔をすると悪いから帰るな。じゃあね、『優衣さん』」
そう言って俊之は消えた。なんだったんだあいつは。
「……学校って、いいですね」
彼女はボソッと言った。
「なら、その内一緒に行こう」
「え? ……はい。いつか、お願いします」
彼女は一瞬驚いたかのような声を上げた後。すぐに返事をした。俺は決意した。いつか連れて行ってやると。
そうだ、俺はラノベを置いていったんだった。
「そういえばさぁ、小説っぽいものをここにおいて来ちゃったんだけどさ、何かなかった?」
俺が聞くと、彼女はハッとして、本を取り出した。まさに俺の愛読書だった。ツンデレ女子高生がニックネームしか明かされていない男子高校生を巻き込んだ『世界を盛り上げる団』とかを作って活動している、あの有名なラノベだ。
「すいません。ちょっと、読ませてもらっちゃいました。颯太さんも読んでるじゃないですか」
微笑みながら、俺にラノベを手渡した。そういえば、『小説は読んでいない』と彼女に嘘ついていたっけ。
「ごめん。ちょっと、言いにくくてさ。面白かった?」
「すごい面白かったです。挿絵もあって、現代っぽいし、文学小説とは違った面白さがあります」
あぁ、彼女を連れて行かないでくれ(別の意味で)。
「そう? もし良かったら、貸そうか?」
って、連れて行っているのは俺か?
「あ、じゃあお言葉に甘えて……といいたいのですが、もう全部読んじゃいました。もしかして、他のこういった小説を持ってたりしますか?」
「持ってますよ。じゃあ、今度来たときに持ってくるよ」
「本当ですか!? すごい楽しみです」
彼女は満点の笑みを浮かべた。そして、俺はこのラノベを鞄に戻した。
「あ、そろそろ帰るね。今日は早く帰らなきゃいけないから」
「はい、わかりました。じゃあ、また今度」
俺は病室を後にした。頼むから、彼女を(別の意味で)連れて行かないでくれ。
――俺は『あの青空に祈りを捧げた』
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