08/02/03
あの青空に祈りを捧げ 第14話
・親父プロジェクトその1〜協力〜
*
俺の名前は多賀伊知郎。高校生の息子がいる。奥さんには先に逝かれちまった。俺は何も出来なかった。もっと金があればもしかしたら助かったかもしれない。
俺はしばしば鍵のかかる部屋にこもって、泣きつぶれる。息子にはばれないようにしているつもりだが、きっと既に感づいているだろう。
仕事は奥さんに逝かれてから、いつも以上に頑張った。もし、という時のために――
息子・多賀颯太は帰宅部で、いつも俺が仕事から帰ってくる時には颯太は帰ってきていた。しかし、ここ二日ほど帰りが遅かった。
俺は少し不安になった。もしかしたら、颯太がいなくなってしまうんじゃないかと。
携帯を取り出してメールを送信する。相手は――
「ども、おじさん」
颯太の友人・相馬俊之君を呼んだ。俊之君と知り合ったのは颯太が俊之君を家に呼んだときだった。奥さんが逝ってから友人を家に招いたのは初めてだった。だから、なんとなくアドレスを交換した。まさか、ここで役に立つとは思わなかった。
「で、早速なんだが、最近学校で颯太の様子がおかしかったりしないかな?」
「う〜ん、あ、そうだ。いつも一緒に帰るんですが、昨日は用事があるからって、さっさと一人で帰っちゃったんですよ。颯太の奴。もしかしたら、彼女ができたのでは?」
「やはり、君もそう思うか……そこで相談だ」
俺は財布から万札を取り出した。
「もし良かったら、真実を突き止めて欲しい。尾行をしてでもなんでもいい。頼めるのは君しかいないんだ」
俺は俊之君の制服の胸ポケットに札を入れた。
「いいんですか?」
「やってくれるか?」
「はい!」
俺と俊之君は握手を交わした。
「たまに家に寄ってってくれ」
颯太はまだ知らない。俺が本気を出すとどうなるのかを……計画が動き出す。
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