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あの青空に祈りを捧げ 第12話
・彼女との関係は
優衣の父親が失踪したらしい。
父親がいなければ入院費を支払えない。母親はパートを強いられた。土日には優衣に会いに来たが、日に日に痩せていった。あまり笑顔を見せなくなった。
ある日、俺が優衣に部屋に行ったときに怒鳴り声が聞こえた。慌てて部屋に入ると、担当看護師が母親に怒鳴られていた。
「あなたは! 何なの!? 優衣をどうするの?」
母親は疑心暗鬼になっていた。疑い深くなっていた。今度は優衣がいなくなってしまうかもしれないと思ったのだろう。俺はすぐに止めた。どうやら、俺は信頼されていたらしく、すぐに怒鳴るのをやめて泣き崩れた。最悪だよな、全部優衣に見られちまったんだ。
事が終わって、母親が帰った後、優衣と話した。会話をする中、優衣はこう言った。
「あたし、大谷先生の時間を無駄にしてないですか?」
俺は、愕然とした。言葉を失った。
「やっぱり……」
優衣の声は弱々しかった。俺はすぐに答えを返した。
「そんな事はない。優衣がいてくれるから、俺がここにいれる。それに優衣との一秒一秒が俺にとっての修行だ。こんな事言ったら悪いけど、ありがたいよ」
「そうですか?」
俺の返答に優衣は少し元気が出た感じの口調だった。
そして、一年と少しが経った。優衣には手術を耐えるだけの体力がついた……のだが――いいや、体力がついたけど、まだもう少し大事を取って、今に至る訳だ。
*
「ちょっと、話しすぎちまったな」
知兄貴は後頭部を掻いて「へっ」と微笑した。俺は黙ったままだ。むしろ、声が出なかった。
「おい、颯太。時間あんだったらついて来い」
「は?」
そんな対応しながらも、俺は知兄貴についていった。一階の診療室らしき部屋につれられた。
「おい、座れ」
知兄貴はドクター用の椅子に座って、俺は患者用の丸椅子に座った。そして、知兄貴は少し小さめな声で話し始めた。
「本来、ご家族にしか見せられないんだが、特別だ。優衣の病状について詳しく説明してやる……けど、誰にも言うなよ。俺のクビが飛ぶから」
そういって、モノクロの写真らしきものを光る壁に貼り付けた。レントゲンだ。
真ん中辺りに肺らしきものが確認できたのだが、形が左右対称じゃなかった。俺から見て右側の肺がなんだかおかしい。
「優衣の肺は見ての通り、片一方の肺が正常に機能していない。息を吸っても肺があまり膨らまない状態になっている。しかもだ、何時もう片一方の肺が機能しなくなるか分らない状態だ。何時爆発するか分らない爆弾を肺に抱えているんだ」
俺は驚いた。元気そうだった彼女がこんな状態だったなんて……知兄貴の説明はまだまだ続いていたが、ほとんど記憶に残っていない。