07/09/19

オレと兄貴と私がいるから 第1話


オッス! オレの名前は『早瀬海晴(はやせみはる)』。オレって呼んでいるけど、受験バリバリの女子中学生だ。

今は、夏休みに初め。不思議な出来事の始まりでもあった。外はもう夕日に染まっていて、一日の終りを告げようとしている。

「ただいま〜」

「おぅ!」

コンビニのビニル袋をぶら下げて帰ってきたのは、オレの兄貴『早瀬優斗(はやせゆうと)』大学二年。夏休みということもあり、バイトだったのである。ついでに、今日の夕飯は惣菜だろう。

オレの兄貴についてだが、一人称は『僕』で喧嘩も口論も非常に弱く頼りない。ただ面倒見がよく家事も出来て、その点では頼れる自慢の兄貴だ。

オレが洗濯物を取り込んで、兄貴がその間に夕飯の準備をする。オレ達には親はいない……

一年前、家族旅行でバスに乗っている時にトラックに追突されて横転をした。どうにか助かったのはオレと兄貴だけだったの。そう、丁度一年前である。

幸運にも、貯蓄もある程度あり兄貴も高校に入ってからずっとバイトをしてくれていたおかげで、二人で一軒家に住んでいられる。兄貴がいるから、オレも生きていける。でも、オレはまだバイトは出来ない。

「夕飯の準備ができたよ」

「わかった」

兄貴はエプロンを外して席に座る。惣菜を更に盛っただけであるがれっきとした夕飯だ。もちろん、兄貴の手料理の日の方が多いから、誤解はしないで欲しい。

「いただきま〜す」

オレは箸を持って、順番に皿の惣菜を口に持っていく。


『寂しい』


けど、もう馴れた。両親がいなくても、兄貴がいる。


『無力』


オレは何もできない。悔しい。少なくともオレは学費が少なくてバイトができる高校に入るつもりだ。そうすれば、兄貴だって……

「海晴? また、悩んでるでしょ? 家の事は心配しなくていいから、受験のことだけを考えて、ね」

兄貴はにこやかに微笑みかけているが、目の下にはくまがありとても疲れているようだ。

十分、食べたオレは食器を片付けて席を後にした。気分が悪かったのでオレは、オレの部屋の戻らずに一度外の空気を吸うために玄関の戸を開け、外に出た。そして、体を伸ばす。

「ふぁぁぁぁぁぁ……あっ!?」

それと同時に玄関の門の外に女の人が倒れているのを見かけた。一人ではどうにもできそうに無いので、兄貴を呼んでその人を家の中に担ぎこんだ。

結局、オレは何もできなかった。

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