08/04/27
魔女の契約 第3話
リリィは三人の前に立った。もし失敗したら……と、考えると身震いがする。身体の震えを止めんばかりに杖を強く握りなおす。
「君は、努力家だそうだね」
「い、いや、そんな事無いです」
リリィは顔を真っ赤にして、うつむく。確かに努力はしていた。でも、グレイと違い成績は火炎と電撃が4で残りは2か1という、標準的な2種属性優秀のパターン成績だった。しかも、初歩的な魔法しか完璧に扱えず、レベルが高い魔法は唱えた事すらない。
「では、早速……」
「はい!」
元気よく返事をして再度、杖を握りなおす。
「『地獄の火炎(インフェルノ)』を唱えてもらおうかな」
「イン……フェルノ」
『インフェルノ』とは火炎属性の上級魔法だ。リリィは唱えた事が無い魔法だった。絶望した。この瞬間に不合格が決まったと。
「地獄の火の魔人よ……」
呪文の詠唱が始まった。自身はない、けれどもやらなければならない。
「全てを焼き尽くす烈火となり……」
杖で斜め上に円を書く。赤い魔方陣が浮かび上がり、火の粉が舞い上がる。
「我力とならん!」
詠唱は終わった。しかし、魔方陣はガラスのように砕け散り、火の粉とともに散ってしまった。
終わった。リリィの顔は絶望に溢れていた。
次に理事長に指示された低級電撃魔法『電撃(サンダーボルト)』をこなし、教頭に指示されたのは……
「力の雷(フォースライトニング)……」
今度は電撃属性の上級魔法だった。リリィは無表情のまま詠唱を始める。
「天の雷(いかずち)の精霊よ。天高くから裁きを与え……」
リリィが杖を振り上げた瞬間。手から杖がすっぽ抜け、学園長の方に飛んでいった。
雷(いかずち)はその杖を避雷針として学園長に襲い掛かってきた。
「反射魔法(リフレクション)!」
とっさに学園長は反射魔法を使い結界を張った。結界に当たった雷は、次にリリィへと襲い掛かってきた。反射的に右手を前に出し。
「反射魔法の反射(リフレクションリフレクト)!」
瞬時にリリィの右手に結界が張られ、雷を反射する。しかし、反射しきれず受け流す形になった雷は生徒達へと襲い掛かり悲鳴が上がった。
「え、あ……」
思わず、苦笑いする。魔法の暴発による学園長への攻撃、反射未完全による生徒への攻撃。不合格要素が揃いに揃ってしまった。
「……」
して、学園長の反応は……
「合格」
「へ……?」
信じられずに顔がこわばる。
「合格だよ。初めての割には上出来だったよ。それに、反射された魔法を反射するとは……」
学園長が微笑みながら指を鳴らすと、リリィの手元にはバッチと鍵と自分の杖がしっかり握られていた。
「……合格。ですか?」
リリィはもう一度尋ねた。
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