08/01/02

おにぎり落ちたそのまま食べた 第1話


2008年元旦。年を越し、めでたい日に少年と少女が低めの山のてっぺんでレジャーシートを広げて弁当を食べていた。

「このたまごやき美味っ!」

少年は口をもごもご動かしながら言った。少女はとても嬉しそうに。

「そう? よかった。もし、不味いって言われたらどうしようかと思っちゃったよ」

と、答えた。少年の名前は『ユタカ』といい。高校2年生である。少女の名前は『ノゾミ』といい。同じく高校2年生だ。

「にしても、弁当の量がすごいんだけど……僕とノゾミとじゃとてもじゃないけど食べられないよ」

「そうだよね……だって、みんな来ると思ったからたくさん作ったんだけど、結局来なかったね」

2人は写真部でこの山に写真を撮りに来ていた。今日は元旦という事もあり自由参加で、2人しか 集まらなかったという訳だ。

「……まぁ、出来るだけ食べるよ。余ったら勿体無いからね」

そういってユタカはおにぎりを手に取った」

が、しかし。

「あっ!」

手を滑らせておにぎりを落としてしまった。それだけでなく、微妙な傾斜により丸いおにぎりが転がりだしてしまったのである。

「ま、待って! ……て言っても待ってはくれないけど」

ユタカは立ち上がって靴も履かずに追いかけた。

「ちょっと! ユタカ?」

ノゾミもユタカを追いかけるために靴を履かずに追いかけた。

追いかけるユタカから逃げるかのように転がるおにぎり。ユタカは疲れてきてハァハァと白い息を出していた。

そして、突如おにぎりが消えた。

「えっ? 消えた?」

ユタカはおにぎりの消えた地点を調べてみた。そこには小さな穴があった。そうすると、その穴から眩い光が飛び出してきた。

「まぶしっ……」

ユタカはあまりにも眩しく目を閉じた。その瞬間。体が浮いた感じがした。

光が収まりユタカはゆっくり目を開けて辺りを確認してみた。すると穴が少しずつ大きくなっていてユタカは落下していた。

「うわぁぁぁぁぁ!」

気が付けば、ユタカは気を失っていた。

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