07/10/29
突出幼心あくりょうちゃん 第8話
〜悪霊退散あくりょうちゃん 最終話〜
結局あくりょうちゃんが斬ったのは銃だけでした。落下中に斬られたので縦に真っ二つになって地面と衝突しました。
「何故、俺を斬らない」
上尾は唖然としています。
「これが、僕らの答えだ」
座り込み、帽子を少し下げる上尾の周りに、僕・春香・義樹・あくりょうちゃんと立ってます。
「完敗だ。今日はこれくらいで引き下がっておこう」
上尾は悔しそうながらもすこし嬉しそうでした。
「やはり友……か、なら友は大切にしろ」
彼はニヤっと笑みを浮かべた瞬間、周りの景色は正常に戻りました。しかし、上尾の姿はどこにもありませんでした……けど、また会えるような気がします。今度は――
「で、アイツはなんだったんだ?」
義樹は頭を掻きながら言います。
「さぁね」
春香が答えます。
「あくりょうちゃんを滅するみたいな事を言ってたけど、まぁいいか」
僕も続きます。
「ところで……」
三人同時に言いました。そしてみんな、あくりょうちゃんの事を見ました。あくりょうちゃんは口をへの字にして、目を潤ませています。きっと、怖かったのでしょう。
「あくりょうちゃん、来なよ」
僕は両手を広げました。すると、あくりょうちゃんは僕の胸に飛び込んできました。僕は優しく抱いてあげます。よく頑張った。そんな風に……
「ス……グ……ル……ダ・イ・ス・キ」
突然の言葉に一同ビックリ。3人揃って「えっ」と声をあげてしまいました。
「少しずつだけど、この子も成長しているのかもね」
春香は微笑みながら言いました。僕と義樹は「そうだね」と答えました。けど、春香の微笑みの裏には何か別の感情があるように見えました。
太陽が傾き、僕らを橙色に染める。僕らより多きな影が見守る。僕らより、幼い彼女がいる。
「ス・グ・ル……ハ・ル・カ……ヨ・シ・キ……」
あくりょうちゃんの呼びかけに「なぁに?」と答える僕らがここにいる。
――そんな僕らの日常はまだまだ終わらない事を信じよう。
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