08/04/04
突出幼心あくりょうちゃん 第15話
〜温泉旅行あくりょうちゃん 第7話〜
「……あ、悪い。これこれ」
義樹はそう言って、冊子を手渡してきました。表紙には『ロミオとジュリエット』と『野球部』と書いてありました。
「何これ?」
「夏休みが終わったら、文化祭があるだろ? そん時に野球部有志で劇をやることになったんだ。だからその練習に思ったんだけど……どうだった? 今の」
僕は肩を撫で下ろしました。劇の練習でした。てっきり、本気かと思いましたよ。
「本当かと思って、ビックリしたよ」
「そうか、よかった。そんで、悪かったな。脅かして」
「ううん。だったら、安心した。じゃあ、行こうか」
「そうだな」
そして、僕と義樹は部屋を出て行きました。温泉にレッツゴーです。
廊下には宿で働いている人としかすれ違いません。もしかして、この宿は客が来ないのか、貸切なのか……
そして、脱衣所に到着しました。結構広くて、驚きました。僕らは浴衣を脱ぎ、浴場へ向かいます。湯煙の中、大きな露天風呂が現れました。仕切りの向こう側には人の気配がして、湯煙も立っています。きっと、春香たちでしょう。
僕は温泉に浸かりました。夏だけど温かくてとても気持ちがいいです。
「あぁ、気持ちいいな」
義樹がタオルを頭に乗せながら言います。まるでおじさんに見えなくもないです。
上空を見ると、湯煙に混じって星や月が輝いてとても綺麗です。
そういえば、あくりょうちゃんは何者なんだろうか、最近気にしてなかったな。何処から来て、何のために僕のところに来たのだろうか。いつかわかるときが来るのかな? そして、いつか――
そんな事を思っていると、僕の目の前にあくりょうちゃんが……って、えぇ!?
「うわぁっ!」
僕も義樹も驚いて立ち上がりました。というか、何であくりょうちゃんがいるの? そして、何で背中から鎌を取り出してるの? 待って、こんなところで僕に向けないで。ちょっと、うわぁぁぁ!
僕は縦に真っ二つにされて温泉に浮んでます。温泉が真っ赤に染まっていきます。さらに、鎌の威力が強かったのか後ろの仕切りがずれていきます。数秒もたたないうちに仕切りが倒れて……
「うわぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
叫び声が旅館近辺に広がるのでした。旅館の人が来たらどんな反応を示すのだろうか……とりあえず、僕を元に戻してください。僕の意識は少しずつ薄れていきました……
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