07/09/08

神サマの忘れ物 第9話

『彼女とぶつかった老人、その人が落とした大切なものは彼女が持っている。俺は神様と名乗る人物と出会いお使いを頼まれる。そこで手に入れた三つの能力。俺の存在を受け入れてくれた彼女。して俺は彼女の家に転がり込むことにした。……そして俺は人と100回話すと消えてしまう……』



「美鈴……それは……」

39回目。そのカチューシャみたいな物とはまさに神様の物であった。

「涼太君が……探してる……物でしょ?」

顔をうつむかせカチューシャを持つ美鈴の手も声も震えていた。

「きっと――それはそうと何で美鈴がこれの存在を知ってるんだ?」

40回目。

「この写真……涼太君がメモ紙をポケットから取り出すときにこれも一緒に落っこちたの」

美鈴は震えた手で黄色いカチューシャの写真を俺に見せ付けた。

「そ、そうだったのか……何で今まで黙ってたんだ?」

41回目。

「だって……これを返したら、涼太君がいなくなっちゃう気がして……だから……」

美鈴は顔をサッと上げると一筋の涙が頬を伝っていた。

「馬鹿……」

42回目。俺は美鈴に囁くように言った。

「けど、やっぱり返さないと……涼太君困るもんね、はいこれ」

「あぁ、ありがとう」

43回目。俺は美鈴の手からカチューシャを受け取った。その瞬間、そのカチューシャっぽい物が激しく黄色い光を放ち始め、俺の手首にピタッとくっ付くかのように形を変え始めた。

「……!」

輝く光が納まったかと思いきやそのカチューシャらしかったものが黄色い腕輪のようになった。


「……それはそうとさぁ、美鈴」

44回目。俺はあることを思い出し、苛立った口調で言った。

「え、何?」

「これどうするんだよ?」

45回目。ウサギのままとなっている俺の耳を指差しながら言った。

「このままでいいじゃん……どうせ任務完了したし、家に居候だし、お母さんにはばれちゃってるんだから」

美鈴はあまり気にしていないようだ。

「ま、まぁそうだけど……」

46回目。俺は目線をそらして恥ずかしそうに答える。それに合わせて耳も垂れ下がる。

「恥ずかしくは無いぞ〜、いっそ秋○原で働いちゃえば?」

美鈴は俺の顔の前で人差し指で渦を書きながら、意地悪そうに言った。

「お、おい! 馬鹿いえよ!」

47回目。俺の恥ずかしさが限界を超えて、叫んでしまった。

「それよりさぁ、数学教えてよ」

突然、美鈴は話を変えた。

「な、何でだよ」

「涼太君が早く帰れるようにね……」

「ちょっと待てよ、俺には帰って欲しくないって……」

49回目。俺は呆気にとられていた。

「だって、早く帰ってくれないと私……寂しくて寂しくて、ね」

美鈴は数学の勉強道具を机の上に広げていた。

「わっけわなんねぇけど、分かったよ……」

50回目。きっと美鈴は俺の事を見ていると事故のこと云々を思い出してしまうのだろう。

明日はどうせ土曜日で学校は休みだ。どうせなら徹夜で勉強を教えてやるか。

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