神サマの忘れ物 第2話
『彼女とぶつかった老人、その人が落とした大切なものは彼女が持っている……そして俺は人と100回話すと消えてしまう……』
俺は目を覚ますと真っ白な空間にいた。どれだけ時間が経っても誰も来ないし何も無い……けど、突然俺の目の前に、老人が現れた。
「で……あんた誰だ?」
俺はそう言ったが、今更ながら無礼だな……俺。
「わしか? わしゃ神様じゃ」
「は、はぁ……」俺はそれしか言えなかった……というか、老人が言っていることを本気にはできなかった。
「お主、信じとらんじゃろ?」
「は、はい」俺は即答した。流石にこれで信じろというのに無理がある。
「ならば、お主に何が起きたかわしが証明してやるかのう」その老人は両手をゆっくり上に挙げると、俺と老人は見覚えのある交差点……いや、事故現場にいた。
「お主ならここがどこだか分かるじゃろ?」俺は、いろんな意味で言葉を失いうなずく事しかできなかった。
すると、自転車に乗る何者かがこちらに近づいてくる。そして、90度振り向くと、一台のトラックがやってきている。両者は距離を縮めている。お互いに止まる気配は無い。
「危ない!」俺は叫んだが聞こえるはずが無かった。
両者は正面衝突、トラックのバンパーは大きく凹み自転車は再起不能な状態だ。被害者……すなわち、俺は頭から血を流して倒れていた。
……そして、俺は――――
「どうじゃったか?」神様がそういうと、さっきまでの真っ白な空間に戻った。
「確かに、俺は……しかし、何で俺がここにいるのですか?」
「わしがお主をここに呼んだのじゃ」俺が……呼ばれた? その理由を聞かずにはいられない。
「何のために俺は呼ばれたんですか?」
「わしが現世に遊びに行った時にちょっとあってな、わしの大事なものを失くしてしまったのじゃよ」
……神は現世に遊びに行くものなのか? けど、今は気にしている場合じゃないな。
「それで、俺に何をしろと……」
「お前さんをしばらくの間、生き返らせてやるから、それを回収して来て欲しいのじゃ」
「分かりましたがその探しているものはどういうものですか?」俺はそう言うと、神様は一枚の写真を手渡してきた。それは俺には『黄色いカチューシャ』の様な物にしか見えなかった。
「わかりました」
「ただ、ずっと現世に残させる訳にはいかんから一つ条件を指定しておく。100回じゃ、100回まで他人と話すまで現世に残れるようにしてある。すなわち、100回他人と話したら還るべき場所に還ってもらうからの」還るべき場所……要するに俺はそれで完全に消える訳か、けど、このまま俺が生き返っても……
「しかし、俺がこのまま戻っても混乱が起こるのでは?」
俺の一言で神様はちょっと考え事を始めた。
「そうじゃの……じゃあお前さんに好きな能力を三つやるから、ささお前さんの望む能力を言うんじゃ」
……突然言われてもすぐ思い浮かぶ訳が無い。とりあえず俺はしばらく考えた。
「一つ目はいざという時に発揮できる能力が欲しいです」
「うむ……じゃ、二つ目は何じゃ?」
あっさりOKか……俺は、もう一度考えた。
「二つ目は人と話さなくても良くなる能力……」
「わかった……じゃ、次じゃ」
おいおい、これも良いのかよ……もう一つは、もう決めている。
「三つ目は、誰かと100回話すまで死なないようにして欲しいです」
「うむ……おまけに怪我もしないようにしておこうかのぅ」
流石神様だな……そして、神様は突然杖を取り出し呪いみたいなのを始めた。
「……これで準備ができた、お前さんの心の準備ができたらゆっくりと目を閉じるのじゃ」
「はい……」俺は躊躇なく目を閉じた……俺が生き返ったらどうなるのだろうか、不安や期待を抱きながら目を閉じた。