07/12/31
神サマの探し物 第8話
という訳で朝になり俺も美鈴も澪が心配ながらも学校へ向かった。……それにしてもこの間、澪は何をしているのだろうか、俺はそう思った。
「ようっ! 鈴木!」
俺は幸田の気配を感じ、いつもの平手打ちを受け止めた。幸田は非常に驚いている。
「鈴木……最近、お前、何か変わったよな?」
「俺がか? どこら辺が?」
少しずつ人口密度が高くなる教室の中、二人の会話は続く。
「え……最近、オーラが違うというか明るくなったというか……」
幸田は俺の事をジーっと見ながら話す。俺は思い当たる節があるため少し焦る。残念ながら顔に出るタイプなのだ。
「そ、そんな事ない!」
俺は完全に慌て口調だった。そして、幸田はいきなり真剣な顔になった。
「……いや、俺、見えるんだよ……」
丁度、幸田が何か言いかけたとき担任が教室に入ってきた。この後、俺が何度聞いても幸田はそれ以上のことは語らなかった……
学校を終え、美鈴より一足早く帰宅した。とにかく澪の様子が気になるのである。折角捕獲したのに逃げられてはたまったものでない。
荒く美鈴の部屋のドアを開けた……俺の予想とは裏腹に澪は部屋の隅に積んであるキャットフードを食べていた。やはり神様の趣味なのか猫の血が混ぜられているようだ……なんだかその、後処理を任された俺って…何だか泣きたくなってきた。
「アンタも食べる?」
スナック感覚でキャットフードを食べている澪はそれを俺に差し出してきた。
「いや……遠慮しておく」
「……付き合い悪いなぁ」
今の澪の一言で俺はカチンと来た。
「そもそも、人間が食うモンじゃないだろ?」
「私、猫だもん! 文句ある?」
……思いっきり、自分を猫だと認めた澪。俺は軽く唖然とした。前世は人間だろうに……さっさとあの世に送り返したくなってきた。
「……文句は無いが、人間としての自覚はあるのか?」
頭を掻きながらため息交じりに俺は聞き返す。部屋には夕日が差し込み始めている。
「もぅ! うるさいなぁ! 私のことは放っといてよ!」
澪は物凄い腕力で俺の事を突き飛ばした。俺はなす術も無く壁に叩きつけられ壁にヒビがはいった。『普通の』人間ならば骨折どころではないだろう。
ドアが閉められる音で、薄れていた意識が戻った。澪の帽子が見当たらないことから、彼女は外に飛び出すつもりだ。そう思っているうちにもう一回、ドアが閉められる音が少し遠くで聞こえた。今度は玄関のようだ。俺はすぐにベランダに出ると、うつむいたまま商店街の方向に走る澪の姿があった。陸上選手も顔負けの足の速さであり、追いつける訳が無い。
「畜生っ!」
追いつけない。分かっていても、俺は玄関へ向かった。
第7話 戻る 第9話